効果的なコード ドキュメンテーションに役立つツールとテクニック

コード ドキュメンテーションについて全体像を把握し、質の高いソフトウェアの提供において不可欠である理由を学びます。開発者によるコード ドキュメントの効率的な作成を可能にする AI の活用法など、コードを適切にドキュメント化する上でのベスト プラクティス、戦略、ツールに関する有用なインサイトを得ることができます。

コード ドキュメントの概要

コード ドキュメントとは、ソフトウェアのソースコードに付随する文書情報で、その目的や仕組み、使い方を開発者に伝える目的で作成されます。適切なコード ドキュメントにより、開発者にとってコードの保守や更新、ソフトウェア開発プロジェクトでの共同作業が容易になります。

コード ドキュメントは以下のようにさまざまな種類があります。

  • インライン コード コメント

    コードの行やブロックがどのように機能するかを説明します。インライン コメントはコードに続けて、あるいはコード内に追加され、通常はコードそのものと同じ言語で記述されます。また、特定のメソッドや関数が果たす機能、そのパラメータや戻り値についても説明します。

  • 概要のドキュメント

    プロジェクトの仕様、システム アーキテクチャ、ビジネス ロジック、ユーザー マニュアルなどのプロジェクト レベルのリソースが含まれます。

  • ウォークスルー ドキュメント

    コードへのコントリビューションがあり、そのパターンや不具合といったコード ベースに関する情報を必要とする開発者向けに作成されます。

コード ドキュメントの利点

開発者が正確さ、一貫性、明確さを保ってコードをドキュメント化することは、ソフトウェアの品質を確保する上で重要です。以下は望ましいコーディング ドキュメンテーションの例です。

  • 開発チームがソフトウェアを理解、改善、および保守するのに役立つ。

    コード ドキュメントはソフトウェア開発ライフ サイクル (SDLC) において非常に重要です。開発者とテスターは、パフォーマンスの最適化、コードのリファクタリング、問題のトラブルシューティング、コードのテストと更新にコード ドキュメントを利用します。また、コード ドキュメントを作成することで開発者が問題の原因を特定しやすくなり、デバッグのプロセスが簡素化されます。

  • コラボレーションを強化する。

    コードを適切にドキュメント化することで、開発チームのコミュニケーションが効率化され、顧客やパートナーとコードを共有しやすくなります。また、チームのオンボーディングやトレーニングもスムーズになります。

  • 時間を節約できる。

    適切にドキュメント化されていないコードは疑念や誤解を招く可能性があるのに対し、適切にドキュメント化されたコードは、開発者にとってコードベースの明確化、説明、サポートに費やす時間の節約になります。また、適切にドキュメント化されたコードは、そうでないコードよりも再利用しやすいため、ソフトウェア開発の迅速化を図る上でも有効です。

  • コンプライアンスに対応する。

    組織がコード ドキュメントを利用するのは、コードが完全であることを示し、それがどのように基準を満たし、規制に準拠し、業界のベストプラクティスに合致しているかを実証するためです。

コード ドキュメントの基礎

クリーンで質の高いコードの記述

適切なコード ドキュメントを作成する上で重要なステップは、クリーンで質の高いコードを書くことです。クリーンなコードの条件は、シンプルかつ簡潔で読みやすく、わかりやすく、修正しやすいことです。コードがクリーンであればあるほど、コードとその仕組みを説明するドキュメントは少なくて済みます。

"Don't repeat yourself" (重複を避ける、DRY) 原則

このクリーン コードの原則は、コードに不必要な情報や重複する情報を含めるべきでないことを強調しています。DRY の核となる概念は、各システム内の知識を単一の信頼できる表現にすることです。DRY の原則は、重複するコード ドキュメントをなくすことでコードベースの理解と維持を容易にします。

記述的ネーミング

クリーンなコードを書くには、変数名や関数名を明確かつ内容を表すようにネーミングすることが重要です。開発者のベストプラクティスとして、それぞれの変数の目的を正確に表す記述的な変数名を選ぶことが推奨されます。そうすれば、変数名を記述したり説明したりするために開発者がコードにコメントを残す必要がありません。

ロジカルなコードベース アーキテクチャ

ロジカルなコードベース アーキテクチャは、コードベースをそれぞれの役割を持つ個別のレイヤーに分けることで、開発者がクリーンなコードを書けるようにします。そうすることでコード ベースにまとまりが生まれ、開発者が依存関係や構造を把握しやすくなります。

GitHub の DevOps ソリューション

Fortune 100 企業の 90 % が安全なソフトウェアの構築、拡張、配信に GitHub を使用している理由をご覧ください。
GitHub でジャーニーを開始する

コード ドキュメントのツールと技法

適切なコード ドキュメント ツールの選択

開発チームは、さまざまなフレームワークやツールの中から、コード ドキュメントの作成と維持に役立つものを選択できます。ツールによっては、ソース コードから情報を抽出してコード ドキュメントを作成し、コードを変更すると自動的に更新する自動ドキュメント作成機能もあります。

開発チームがそれぞれのコードベースに合ったツールを選ぶことが重要です。たとえば、Javadoc は Java コードベースでよく使われ、Sphinx は主に Python コードベースで使われるドキュメンテーション ツールです。

コード ドキュメントの共有に適したツールの選択は、もうひとつの重要な決定事項です。開発チームはコードリポジトリ、注釈付きコードスニペットを使用した共有ファイル、静的サイトホスティングサービス (GitHub Pages など) を使用する場合があります。

GitHub にコードを保存している開発者にとって、ドキュメントがコードと一緒に保存される GitHub Pages は最適な選択です。開発者は、ビルド、テスト、デプロイのパイプラインを自動化する継続的インテグレーションと継続的デリバリー (CI/CD) プラットフォーム である GitHub Actions を使用して、GitHub Pages にコード ドキュメントを自動的にデプロイできます。また、GitHub コード レビュー ツール (Issues や Pull Requests など) を使って、コードの品質を高めるレビュー プロセスを構築することもできます。

コーディングと並行したドキュメンテーション

Documentation as Code (Docs as Code) とは、開発者がコードの記述とドキュメント作成の両方に同じツールを使用する手法です。たとえば、GitHub Copilot は AI を活用したツールで、開発者によるコードの記述とドキュメンテーションの両方を効率化します。コードを記述する場合、Copilot はコードのコンテキストに基づいて関数定義、コード スニペット、さらにはクラス全体の候補を表示します。開発者は Copilot を使用して、ドキュメントを作成するときにオートコンプリートのスタイル候補を表示することもできます。

以下はグレーのフォントで候補が表示された Copilot コード ドキュメントの例です。

Copilot code documentation example with the suggestion

Copilot のコード提案を使用したドキュメントの記述方法については、こちらの短いデモビデオをご覧ください。

GitHub Copilot と AI の詳細については、GitHub Copilot Trust Center をご覧ください。

コードへのコメントの活用

コードへのコメントの目的は、コンテキストを補足したり説明を加えたりすることで、ソースコードをわかりやすくすることです。開発者は、コードのレビュー、保守、バグの修正、リファクタリングにもコメントを活用します。

開発者にとって、明確で簡潔なコメントを書き、個人的な見解や独特の用語を避けることは重要です。また、他の人にとってコードを読みづらく、わかりにくくするような冗長で不必要なコメントを書くことも避けたほうがよいでしょう。

コード ドキュメントのベストプラクティス

  1. 理解しやすく、シンプルな言葉を使用し、コードスニペットや例示で概念を説明する詳細かつ明確なドキュメントを作成します。他の開発者が理解できないような込み入った説明や専門用語は避けます。

  2. **一貫性のある命名規則を使用する:**クラス、関数、変数、ファイル、ディレクトリの命名では特に重要です。そうすることで、複数の開発者が同じコードベースで作業しやすくなります。

  3. README ファイルを含める:README ファイルはプロジェクトの内容、ユーザーが最初に読むべき注意事項、プロジェクトにコントリビュートする際のガイドラインを示すプロジェクトガイドです。

  4. コーディングの決定と、それがコードベースに与える影響について説明します。コーディングの選択の背景にある理由を他の開発者が理解できるようにすることで、予想される質問への回答を準備し、誤解を受ける可能性を減らすことができます。

戦略と手法

  • **コード ドキュメント戦略を策定する。**ドキュメントの読者を絞り込み、そのニーズを理解すること、ドキュメントを作成、管理するツールを選択すること、命名規則などの基準を定義することなどがこれにあたります。さらに、コード ドキュメントをソフトウェア開発のプロセスにどのように組み込むか、どのように維持し、更新するかを定義することも重要です。

  • ドキュメントにアジャイルのプラクティスを組み込む。アジャイルとは、実行可能な最小限のプロダクトを構築し、顧客のビジネスの必須要件を満たすことに重点を置くソフトウェア開発のプロセスです。アジャイルの手法では、包括的なドキュメンテーションよりも実際に動作するソフトウェアを重視しますが、ソフトウェアがどのように開発され、どのように使われるべきかを理解するうえで必要となる重要な情報をプロジェクトで示すべきであると強調しています。また、コード ドキュメントはソフトウェアの完成後ではなく、プロジェクトのライフサイクルの中で開発されることが望ましいという点も強調されています。

  • **人間優先で記述する。**コード ドキュメントの最も重要な対象者は人間です。開発者はコードをドキュメント化するにあたり、自分のコメントが他の人のコードに対する理解を深め、保守を容易にする上で助けになるかどうかを自問してみましょう。そうでない場合はコードへのコメントを見直し、より明確で簡潔なコメントに修正します。

  • **コラボレーションとフィードバックを奨励する。**開発者が互いにコード ドキュメントをレビューし、フィードバックを提供することも必要になります。ソフトウェア開発のプロセス、特にコードレビューの段階でドキュメントをチェックする機会を増やすことにより、ドキュメントの質を向上させ、開発者全員のコードベースに対する理解をすり合わせることができます。

コード ドキュメントの保守と更新

ドキュメントを常に最新の状態に保つことは、コードの品質を維持する上で非常に重要です。ドキュメントにコードベースの現状が反映されていなければ、手動または自動で更新する必要があります。これを簡単に実行する方法として以下が挙げられます。

  • コードが変更されると自動的にドキュメントを更新するドキュメント生成ツールを使用する。

  • コード レビューのプロセスにドキュメントのレビューを追加する。

  • GitHub などのバージョン管理システムを活用して、コードベースやドキュメントの変更を追跡する。

まとめ

開発チームがコードのドキュメント化をコードの記述と同じくらい重視すべき理由について説明しました。コードを適切にドキュメント化することで、開発者にとってコードの保守や更新、ソフトウェア プロジェクトでの共同作業が容易になります。ベスト プラクティスの例として、クリーンで質の高いコードの記述、コードへのコメントの活用、適切なツール (AI を活用して候補を提案する GitHub Copilot、コード レビューのプロセスを自動化する GitHub コード レビュー ツール、構築からテスト、デプロイメントまでのパイプラインを自動化する CI/CD プラットフォームの GitHub Actions など) の選択が挙げられます。

FAQ

コード ドキュメントとは何ですか。

コード ドキュメントとはソフトウェアのコードに付随する文字情報を指し、開発者はこの情報からコードの目的、仕組み、使い方を理解することができます。コードを適切にドキュメント化することで、開発者にとってコードの保守、更新、修正、ソフトウェア プロジェクトでの共同作業が容易になります。

コード ドキュメントの例にはどのようなものがありますか。

インライン コメントはコード ドキュメントの一例です。インライン コメントはコードに内在し、コードの行やブロックの動作とその目的を説明します。メソッドや関数のインライン コメントには、そのメソッドや関数が行う処理や入出力を記述します。

コード ドキュメントはプログラミング言語によって変わりますか。

はい。通常、コード ドキュメントはコードベースで使用されているプログラミング言語によって変わります。プログラミング言語の中には、Java コード用の Javadoc や Python コード用の docstrings など、コードのドキュメント化に独自のプラクティスやツールが用意されているものがあります。たとえば docstring では関数、クラス、メソッド、モジュールの目的を記述する場合に三重引用符を使用しますが、Javadoc では /** で始まり */ で終わるコメントを使用します。